経営者の皆様、日々の業務お疲れ様です。秋野彰子税理士事務所です。
9月に入り、少しずつ秋の気配を感じる季節となりましたね。
さて、秋はスタートアップ企業や店舗経営において、年末の繁忙期や来春の事業拡大に向けた「採用活動」が活発になるシーズンです。新しい仲間(中途採用社員)や、心強いパートナー(業務委託メンバー)を迎え入れる準備は進んでいますでしょうか。
人を採用・外注するタイミングで、経営者が絶対に知っておかなければならないのが「源泉徴収」のルールです。「毎月給料から引けばいいんでしょ?」「業務委託なら全部10.21%引けばいいよね」と勘違いしていると、後々税務署からペナルティを受けることになりかねません。
今回は、秋の受け入れ時に間違えやすい源泉徴収の基本と、税務調査で狙われやすい「業務委託と給与の境界線」について解説します。
目次
【中途採用】前職の「源泉徴収票」は早めの回収が命!
会社が従業員に給与を支払う場合、原則として毎月の給与から「所得税・復興特別所得税」を天引き(源泉徴収)して国に納める義務があります。この金額は「給与所得の源泉徴収税額表」をもとに計算します。
入社時に必ず確認していただきたいのが、「扶養控除等申告書」の提出です。この書類の提出がある場合は税額が安い「甲欄」、提出がない場合(他社でメインの給与をもらっている副業社員など)は税額が高い「乙欄」で計算することになります。
■ 秋採用は「年末調整」までの時間が短い!
年の途中で転職してきた中途採用社員の場合、新しい勤務先(自社)で前職の給与と合算して年末調整を行うことができます。その際に絶対に必要になるのが「前職の源泉徴収票」です。
「前の会社では年収〇〇万円でした」という本人の自己申告だけで年末調整を行うことはできません。秋以降の採用は、入社してから年末調整の準備が始まるまでの期間が非常に短いです。前職の会社からの発行が遅れるケースも多いため、入社手続きのタイミングで「前職の源泉徴収票を早めに提出してくださいね」とアナウンスしておくことが、年末の経理トラブルを防ぐコツです。
【業務委託】「全部10.21%引く」は大きな間違い?
外部のフリーランス等に仕事を依頼する際、「個人への業務委託料は、とりあえずすべて10.21%源泉徴収しておけばOK」と考えている方がいますが、これは誤りです。
源泉徴収が必要かどうかは、「支払先が個人か法人か」だけでなく、「何の業務に対する報酬なのか」によって厳密に決まっています。個人に支払う報酬であっても、所得税法で定められた対象業務でなければ、原則として源泉徴収は不要です。(※法人への一般的な業務委託料は、原則として源泉徴収の対象外です)
■ 源泉徴収が必要になる代表的な業務委託報酬
- 原稿料、デザイン料、講演料
- 税理士、弁護士、司法書士など特定の士業への報酬
- 一定のモデル、芸能関係の報酬など
例えば、同じ「業務委託」でも、チラシのデザインを依頼した場合は源泉徴収が必要(デザイン料)ですが、単なるデータ入力代行や清掃業務を依頼した場合は源泉徴収が不要となります。「業務委託だから」という契約の名称だけで判断せず、実際の業務内容(何に対する支払いか)を確認することが重要です。
【要注意】「業務委託」のつもりでも「給与」になるケース
税務調査で非常に厳しく見られるのが、「契約書には『業務委託』と書いてあるけれど、実態は『従業員(給与)』だよね」と認定されてしまうケースです。
たとえ業務委託契約書を交わしていても、以下のような実態があれば「給与」として扱うべきだと判断されるリスクが高まります。
- 勤務時間や勤務場所を会社が細かく指定している
- 仕事の進め方について、会社から具体的な指揮命令を受けている
- 仕事を本人以外の別の人に代替させることができない(専属性が高い)
- 時間給や日給など、働いた「時間」に応じて報酬が決まっている
もし税務調査で「外注費ではなく給与である」と認定された場合、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるだけでなく、消費税(外注費としての仕入税額控除の否認)や社会保険料にも多大な影響を及ぼし、会社にとって致命的なダメージになりかねません。
秋の採用・受け入れ時チェックリスト
人を受け入れる際は、契約形態と税務処理をセットで整理しておくことが大切です。秋の採用時には、以下のポイントを必ず確認しましょう。
✅ 受け入れ時の確認リスト
- その人は「従業員」か「業務委託」か?(実態は伴っているか)
- 【中途採用】扶養控除等申告書と、前職の源泉徴収票は回収したか?
- 【業務委託】支払先は「個人」か「法人」か?
- 【業務委託】依頼する業務内容は、源泉徴収の対象になるか?
- 預かった源泉所得税の納付期限(原則翌月10日、または納期の特例)を把握しているか?
私たち秋野彰子税理士事務所は、採用に伴う経理・税務面での不安を取り除き、経営者が自信を持って強い組織を作っていくための「後押し」をいたします。
「この支払いは源泉徴収が必要?」「業務委託契約の内容はこれで大丈夫?」と不安に感じた時は、自己判断せず、ぜひ専門家である私たちにご相談ください。