経営者の皆様、日々の業務お疲れ様です。秋野彰子税理士事務所です。
前回のコラムでは、納涼会や社員旅行など「夏のイベント費用」の経理処理についてお話ししました。今回は、イベントではなく「日常の福利厚生」に関する最新の話題をお届けします。
皆様は最近、SNSなどで「会社の食事補助、非課税限度額が月7,500円に引き上げ!」「食事券やポイントでお得にランチ!」といった情報を目にすることはありませんか?
実は令和8年度の税制改正により、会社が従業員に提供する「食事補助」の非課税限度額が大幅に引き上げられ、すでに運用がスタートしています。今回は、この改正のポイントと、話題の「食事専用ポイント・食事券」の仕組み、そして導入時に絶対に間違えてはいけない注意点について解説します。
目次
第一章:【令和8年度税制改正】食事補助が月7,500円まで非課税に!
これまで、会社が役員や従業員に食事代を補助する場合、給与として課税されないための会社負担の上限は「月額3,500円」でした。しかし今回の税制改正により、物価上昇やランチ代の高騰などを踏まえて、なんと約40年ぶりに限度額が見直されました。
【非課税となる会社負担の上限額】
改正前:月額3,500円まで
改正後:月額7,500円まで(税抜)
また、深夜勤務に伴う夜食を現物で提供することが著しく困難な場合に、その現物支給に代えて金銭を支給するときの非課税限度額も、1回300円以下から「1回650円以下」に引き上げられています。
この改正は「これから始まる制度」ではなく、令和8年(2026年)4月1日以後に支給する食事からすでに適用がスタートしています。会社負担の上限が2倍以上になったことで、従業員の手取りを実質的に増やしながら福利厚生を充実させたいスタートアップ企業にとって、非常に魅力的な制度となりました。
第二章:要注意!「現金支給」や「後日精算」は給与になります
「月7,500円まで非課税になるなら、毎月の給料にランチ代として7,500円上乗せしよう!」
経営者の皆様、ちょっと待ってください。これは絶対にNGです。
食事補助を給与課税(源泉所得税の対象)されないようにするためには、次の2つの条件を両方満たす必要があります。
- 条件①:役員・従業員が食事代の「50%以上」を負担していること
- 条件②:会社の負担額が「月額7,500円以下(税抜)」であること
例えば、1か月の食事代が15,000円だった場合、「従業員負担7,500円」「会社負担7,500円」であれば要件を満たします。会社が一方的に7,500円分のランチ代を全額おごる、という制度ではない点に注意が必要です。
さらに間違えやすいのが「支給方法」です。この非課税制度は、弁当を購入して提供したり、契約した食堂で食事を提供したりといった「食事の現物支給」を前提としています。
そのため、以下のようなケースは原則として「給与」とみなされ課税されてしまいます。
- 毎月の給与と一緒に、現金で7,500円を支給する。
- 従業員が自分でランチ代を払い、後から領収書を提出させて7,500円まで口座に振り込む(キャッシュバック)。
「7,500円以下だから非課税」ではなく、「食事の現物支給に該当する仕組みの中で、会社負担が7,500円以下」というのが正しい理解です。
第三章:最近よく見る「食事専用ポイント・食事券」の仕組みとは?
では、社員食堂を作ったり毎日お弁当を手配したりするのが難しいスタートアップ企業は、どうすれば良いのでしょうか?そこで最近注目を集めているのが、福利厚生サービス会社が提供する「食事専用の電子カード・食事券・ポイント等」を利用する仕組みです。
ここで重要なのは、「ポイントだから非課税」なのではなく、「実質的に会社からの現金支給ではなく、『食事の提供(現物支給)』として設計されているから非課税」だということです。
自社で独自に飲食店と契約してスキームを作る場合なども含め、以下の点が守られているかがカギとなります。
- 食事や飲食物の購入に用途が限定されているか
- 自由に現金化(換金)できない仕組みか
- 一般の商品購入など、自由に使い回せないか
- 従業員本人の負担割合(50%以上)を適切に管理できているか
自社で適当に「自由に使えるポイント7,500円」を付与しても非課税にはなりませんので、導入の際はしっかりとした制度設計が必要です。
まとめ:正しいルール理解で、会社も社員も嬉しい制度設計を
上限額が月7,500円に引き上げられた食事補助は、ルールを守ってうまく活用すれば、従業員の満足度を高める素晴らしい福利厚生になります。
しかし、「× 現金支給」「× 後日精算」「× 自由に使えるポイント」など、運用方法を間違えると、せっかくの福利厚生が給与課税の対象となり、後々の税務調査で思わぬペナルティを受けることになりかねません。
私たち秋野彰子税理士事務所は、こうした新しい制度を正しく活用し、企業を成長させていくための「後押し」をいたします。
食事補助に限らず、福利厚生制度は「他社がやっているから」と安易に導入するのではなく、経営者ご自身が自社の実態に合ったルールを理解し、判断を下すことが大切です。そのための客観的な「助言」が必要な時は、専門家である私たちにぜひご相談ください。給与規程や運用方法も含め、税務リスクのない強い会社づくりをサポートさせていただきます。