【税務調査エピソード】実際にあった、経費否認の意外な事例とその理由。

経営者の皆様、日々の業務お疲れ様です。秋野彰子税理士事務所です。
本格的な夏を迎え、暑い日が続いておりますが、事業の状況はいかがでしょうか。

さて、起業して事業が少しずつ動き出すと、様々な支払いが発生しますよね。その際、「仕事に使ったお金だから、当然経費になるよね?」と、直感的に判断していませんか?

実は、経営者ご自身は「完全に仕事用」と思っていても、税務調査の現場ではそう簡単に認めてもらえないケースが多々あります。今回は、税務調査で実際に問題になりやすい「意外と否認される経費」の事例と、その理由について、現場のリアルな視点からご紹介します。

①高級ブランド品と経費のイメージ

① 仕事のために買った高級ブランド品

お客様との大切な商談や、SNSでのプロモーション撮影、あるいは仕事上のセルフブランディングのために購入した高級ブランドのバッグや洋服。「仕事のイメージアップのために買ったのだから経費だろう」と考える経営者の方は少なくありません。

しかし、税務調査ではこう指摘されることがよくあります。
「社長、これはプライベートでも使えるものではありませんか?」

特に、一般的な洋服・バッグ・靴・アクセサリーといったアパレル用品は、「仕事でも使っている」という事実だけでは、なかなか経費として認められにくいのが現実です。大切なのは、「仕事で使ったか」だけではなく、「その支出が事業を営む上で直接的に必要だったことを、第三者に客観的に説明できるか」という点にあります。

②接待交際費と食事のイメージ

② 家族との食事を「接待交際費」にしていた

飲食店の立派な領収書があるからといって、すべてが自動的に経費になるわけではありません。税務調査で調査官が意外と細かく確認してくるのが以下の点です。

  • 「どなたと行かれたのですか?」
  • 「どのような目的の食事ですか?」

取引先や見込み客とのビジネスに関する会食であれば、当然「接待交際費」として認められます。しかし、実際には家族だけでの食事や、友人との単なる飲み会だった場合、それは原則としてプライベートな支出(家事費)とみなされます。

対策として、領収書の裏や会計ソフトの摘要欄に「○○株式会社の△△様・新規案件のお打ち合わせ」など、相手の社名・氏名と目的を必ず書き残しておく習慣をつけましょう。数年後の税務調査で「誰と食べたか、ちょっと覚えていません…」では、事業との関連性を説明することは非常に難しくなってしまいます。

③視察旅行のイメージ

③ 「視察旅行」のつもりが、ただの家族旅行と判断された

経営者の方がよく判断に迷うのが、「旅行と経費」の境界線です。
例えば、飲食店経営者が話題の繁盛店を視察に行ったり、美容サロンの経営者が最新技術を見学するために海外へ行ったりする場合、事業との明確な関連性があれば旅費交通費として経費になる可能性があります。

しかし、以下のようなケースでは「実態は単なるプライベートの家族旅行では?」と厳しく判断される可能性が高くなります。

  • 家族全員で同行している
  • スケジュールの大部分が観光である
  • 視察先の写真や訪問記録が一切ない
  • 仕事をしたという客観的な証拠が残っていない

視察旅行として正しく経費にするのであれば、訪問先・目的・現地の写真・視察レポート・商談の記録などをしっかりと残しておくことが大切です。また、仕事とプライベートの観光が混在している場合は、全額を経費にするのではなく、「事業に関係する部分(日数や時間)」だけを合理的に区分して計上するという考え方も必要になります。

④自宅家賃の按分イメージ

④ 自宅家賃を「全部経費」にしていた

自宅の一室で仕事をしている個人事業主や、起業直後のフリーランスの方に非常によくあるケースです。「毎日自宅で仕事をしているのだから、家賃は全額経費にしていいはず」と思ってしまうお気持ちは分かりますが、基本的には全額を経費とすることは難しいです。

自宅兼事務所の場合、仕事で使用している面積(床面積)や、使用している時間など、合理的な基準で「家事分(プライベート)」と「事業分(仕事)」を分ける(按分する)必要があります。家賃20万円のマンションだからといって、20万円すべてが経費になるわけではありません。

税務調査では、「どの部屋を仕事に使っていますか?」「それは何㎡ですか?」「その部屋をプライベートでは一切使っていませんか?」と具体的に確認されます。なんとなく「50%くらいかな」と決めるのではなく、「なぜこの割合にしたのか、根拠を持って説明できること」が最大のポイントです。

⑤領収書と経費のイメージ

⑤ 領収書があるのに経費として認められなかった

「領収書があれば、自動的に経費として認められる」
実は、これが経営者の皆様が陥りがちな一番大きな誤解です。

領収書は、あくまで「そのお店に、いくらお金を支払ったか」を証明する証拠にすぎません。「その支出が、あなたの事業にとって本当に必要だったこと」までを証明してくれる魔法の紙ではないのです。

税務調査では、単に紙の有無を見るのではなく、「何のために使ったのか」「誰と使ったのか」「それが自社の売上とどう関係しているのか」という“中身”が深く確認されます。逆に言えば、レシートや領収書だけではパッと見で仕事用かどうかが分かりにくい支出ほど、裏面にメモを残したり、関連する企画書やメールを保存したりしておくことが大切です。

まとめ:最大の対策は「自分の言葉で説明できるか」

経費になるかどうかを迷ったとき、「領収書があるから大丈夫」という基準だけで判断するのではなく、「数年後の税務調査で『これは何のために使ったお金ですか?』と聞かれたとき、事業との関係をきちんと説明できるか?」と、ご自身に問いかけてみてください。

同じ支出であっても、業種や使い方、事業のフェーズによって経費かどうかの判断は変わります。いざという時に慌てないためにも、「誰と・何のために・どんな仕事に使ったのか」を日頃から記録しておくことが、最強の税務調査対策となります。

私たち秋野彰子税理士事務所は、経営者の皆様がこれらの数字と記録を自ら把握し、自信を持って次の一手を打つための「後押し」をいたします。私たちは、経営者に代わって都合の良い言い訳を考えたり、指示出しをしたりすることはいたしません。

なぜなら、事業の実態を最も深く理解し、そのお金の使い道の意味を自分の言葉で説明できるのは、他ならぬ経営者ご自身だからです。私たちは税務の専門家として、正しい基準で判断するための客観的な「助言」をご提供します。日々の経理処理に不安を感じた時は、ぜひ一度ご相談ください。

秋野彰子税理士事務所 代表 秋野彰子

執筆者

秋野彰子税理士事務所 代表 秋野彰子

当事務所は、サロン・美容・飲食などの店舗経営を中心に、創業支援・融資サポート・経営改善を得意としています。女性ならではの感性で、「話しやすい」「相談しやすい」パートナーとして、数字の裏にある“想い”に寄り添いながら、あなたの事業の未来をデザインします。

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